以前、後藤学園ホームページで、このページがありましたけれど、HP更新をされてから、このページがなくなってしまいました。
よい参考文献なので、こちらで、キャッシュのHPより、保存させていただきました。
最近HPで、このページをみつける事が、できましたので、参考に記しておきます
http://www.lifence.ac.jp/kuma/qblkf/3blkf/3kusim.html
扁桃炎の予防
福 岡 地 方 会
東洋医学筑後研究会 下川 貞行
はじめに
疾病治療を主眼においた現在の医療体制の中にあって、伝統ある鍼灸治療は半健康状態をコントロールし、快適な日常生活をおくれるよう、また疾病の治療と予防を念頭に入れた、古くて新しい医術であることを再確認し、今回は習慣性扁炎予防の症例を報告する。扁桃は、鼻腔や口腔からの異物に最初に接するリンパ組織で、その構造上、種々の病原体その他の異物を捕らえやすくなっており、液性免疫反応や細胞性免疫反応を行い、さらにウイルス感染に対してインターフェロンを産生する等、感染防御に働く免疫性の受容体とみなされている。
扁桃炎は中医学において喉痺、乳蛾の範疇に属し、肺胃の内に熱毒が薀もり、かつ風邪を受けることによりおきるとされている。本症例は慢性扁桃炎の基盤の上に発熱を伴ったアンギーナの反復がみられる潜在性炎症巣の再燃と考えているが、どのようなメカニズムで炎症再燃がおこるのか明確にはわかっていないが、しばしば全身疾患の原因ともなることは古くから知られている。
[症例1]
患 者 K.T 男 7歳 小学2年
初 診 1994年(平成6年)6月25日
主 訴 よく扁桃炎を起こす
現病歴
幼児の頃から扁桃炎を度々起こし、発熱すると40度程になり、5日間程度続く。1ヶ月に1・2回は発症し、その都度学校を休まなければならない、手術を考えたが、知り合いの医師に相談したら当院を紹介されたと来院する。
既往歴 特記事項なし
現 症 発症のとき以外は元気。体格普通。色白。
治 療 10回を1クールとして、週1回の治療。
孔最、太谿へ1寸01番鍼(0.14mm×30mm)にて単刺及び全身的な小児鍼。
家庭用小児鍼(毎日、1回、5分以内)。
経 過 7月16日(4回目)
14日に発熱(最高38度6分)、1日学校を休む、解毒剤無しで平熱となる。
7月23日(5回目)
鼻水、のどのムズムズあり。発熱無し。迎香、印堂、上星に
1寸01番(0.14mm×30mm)にて置鍼15分追加。
9月3日(10回目)
8月31日に37度4分程の微熱あり、以前、医院からもらっていた薬をのみ、
次の日は平熱になり、元気に学校へいく。予防の治療完了。
10月22日 TELにて、現在まで発症なく元気。
季節の変わり目で心配している。(母親談)
1995年(平成7年)1月6日
TELにて、現在まで風邪症状2・3回はあったが、扁桃炎の発症はなく、
元気だったので1ヶ月前から家庭用小児鍼は止めている。(母親談)
[症例2]
患 者 S・S 男 39才 JR九州勤務
初 診 1992年(平成4年)9月11日
主 訴 扁桃が腫れやすい
現病歴
毎年数回扁桃が腫れ、高熱とひどいのどの痛み等にて苦しめられているとのこと。今年になって3月に発症、耳鼻科にて治癒。また8月下旬に発症し、1週間にてひどい症状は無くなったが現在も通院中。耳鼻科では様子を見て手術をしようかと言われたとのこと。知人から鍼灸がよいと聞き来院する。
既往歴 1986年(昭和61年)8月 扁桃周囲腫瘍切開排膿
現 症 のどがムズムズする。肥満ぎみ、浅黒い。脈は腎虚
治 療 10回を1ク-ルとして、週2回の治療。
太谿に補鍼、風門、肺兪、胃兪、腎兪付近の硬穴に単刺、
1寸1番 (0.16mm×30mm)。頚肩背部に皮膚鍼
合谷、孔最へ置鍼通電15分、1寸3分3番(0.20mm×40mm)。
経 過 9月22日(3回目)
昨日からのどが少し痛み出す。少商からの瀉血追加。
10月13日(8回目)
のどの痛み、ムズムズ等の症状なく最近調子よい。
10月17日(9回目)
調子よい。予防の治療終了。
1994年(平成6年)10月22日
TELにて、その後、手術無しで、扁桃炎の発症なく元気とのこと。
1994年12月24日
扁桃炎発症なく元気。(父親談、来院時)
考 察
急性扁桃炎の場合は肺経の風熱を疏解するため少商の瀉血を行うが、本症例のような習慣性扁桃炎において、その再熱が診られない時期には、咽頭に風熱の邪が結ばれたり、気血の凝帯することを防ぐため、気血の深く集まる所と解されている孔最穴及び種族維持と個体維持の根源体で先天の気を宿す所の腎の原穴でもあり、咽喉の諸症状にも効果があるとされる太谿穴への刺鍼を行った。
症例2では芹沢勝助博士の扁桃炎予防研究の刺鍼法である、孔最穴、合谷穴への置鍼通電を行った。尚、子供では小児鍼、成人では背部兪穴への刺鍼を加える等、全身治療による身体の抵抗力増強と疲労回復及びストレスの解消等、より良くすることを期待した。
おわりに
黄帝内經素問にもあるように予防医学的立場からの針灸施術法や養生法の重要性を再考し「いまだ、病まざるを治す」この言葉を味わいなおすとともに、その教えるところは、方法は違っていても現代の医学にも合い通じるものであると考える。
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